コーヒーが血糖値に与える影響については、良い面と悪い面の情報が交錯していて、分かりにくいことが多いのではないでしょうか?
今回は過去の「コーヒーと糖尿病」に関する研究から推測できることを整理してみましたので、参考にしてください。
コーヒーに糖尿病予防効果があるのは間違いない
コーヒーの糖尿病予防効果について調べてみると、次のようなエビデンスがたくさん出てきます。
●男女1万7000人を7年間追跡した研究で、1日7杯以上コーヒーを飲む人は、1日2杯以下の人よりも糖尿病の発症率が50%少ない(オランダ、2002年のLancet誌に掲載)
●男性4万人、女性8万人を最長18年間追跡し、コーヒーを1日6杯以上飲む人では、2型糖尿病の発症率がコーヒーを飲まない人より大幅に低い(アメリカの大規模コホート研究結果、2004年1/6 Annals of Internal Medicine誌掲載)
●35~64歳の約14600人を調査した結果、1日3~4杯のコーヒーを飲んだ人は飲まない人に比べて、糖尿病にかかる確率が女性で29%、男性で27%減少した(フィンランド国立公衆衛生研究所、2004年3/10発行の米医師会誌(JAMA)掲載)
●40~69歳の日本人約5万6,000人を対象に調査した結果、コーヒーを週に3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて、2型糖尿病を発症するリスクが男性で17%、女性で38%低下した(国立国際医療研究センター糖尿病研究部、2009年「JPHC研究」で発表)
どうやらコーヒーに糖尿病予防効果があるのは間違いないようです。
何が糖尿病予防に働いているのかは明確ではない
これらの研究結果では、単に「コーヒー」と言っているだけで、そのメカニズムについては言及していません。
そこで、全日本コーヒー協会のサイトに掲載されている、九州大学大学院 医学研究院の古野純典教授による研究に注目してみました。
この研究によれば、普通のコーヒーとデカフェコーヒー(カフェイン抜きコーヒー)、双方ともに耐糖能の悪化を予防することが示唆されたとあります。(耐糖能とは、ブドウ糖の処理能力のこと)
つまり、カフェインではないコーヒーの何かによっても改善するということ。
ただし、カフェイン抜きよりも普通のコーヒー(カフェイン入り)の方が、良い数値を出しています。
これは2004年にアメリカで行われたコホート研究の結果でも同じで、カフェイン抜きコーヒーでも飲まない人よりは2型糖尿病の発症率が低いものの、通常のコーヒーほどではないというものです。
クロロゲン酸+カフェインに糖尿病予防効果あり!?
次に、UCC上島珈琲が行った、「コーヒー豆に含まれるクロロゲン酸類の研究」に注目してみました。
クロロゲン酸は、まだ焙煎していない生のコーヒー豆に多く含まれるポリフェノールで、抗酸化作用があります。
この研究によると、クロロゲン酸類を豊富に含む脱カフェインコーヒー生豆抽出物(EDGCB)は、食後血糖値の上昇を抑制するという結果が出ています。
クロロゲン酸については、脂肪燃焼促進によるダイエット効果などもあり、血糖値や糖尿病に対するマイナス要因は見当たりません。
この結果から、カフェイン抜きコーヒーでも糖尿病予防効果がある理由は、クロロゲン酸による効果ではないかと推測できます。
では、カフェイン抜きコーヒーよりも普通のコーヒーの方が、予防効果が高かった理由は何かというと、やはりカフェインも糖尿病予防に貢献しているということ。
カフェインには、ミトコンドリアの「PGC-1α」という物質を増やす働きもあります。
ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作り出している器官で、「PGC-1α」が増えると糖代謝や脂肪代謝が活性化するのです。
糖代謝が促進されれば、糖尿病予防にもなります。
コーヒーに含まれるその他の成分についての影響はよく分かっていませんので、他にもコーヒー独特の相乗効果があるのかもしれませんね。
糖尿病患者にカフェインは逆効果
コーヒーには糖尿病予防効果があるということは分かりました。
しかし一方では、ご飯などの炭水化物と一緒に、あるいは食後にコーヒーを飲むと、食後血糖値が上がるということも、これまで多くの研究で確認されていて、事実のようです。
この理由は、コーヒーのカフェインがアドレナリン分泌を促進して、インスリン抵抗性を引き起こす、つまりインスリンが効きにくくなるので、血糖値を下げられないためと考えられています。
UCC上島珈琲の研究では、コーヒーのクロロゲン酸は食後血糖値の上昇抑制に効果がある。
その反面、コーヒーのカフェインは食後血糖値を上昇させることになります。
面白いのが、このコーヒーによる食後血糖値の上昇は、すでに糖尿病を発症している人に顕著に現れるということ。
クロロゲン酸の血糖値に関する機能は、糖質分解酵素の働きを抑制したり、腸からのブドウ糖吸収を阻害したりするもので、インスリンには関わっていません。
おそらく糖尿病患者にとってはクロロゲン酸の効果よりも、カフェインのインスリン抵抗性の方が強く影響してしまうということでしょう。
ならば「糖尿病患者は空腹時にコーヒーを飲めば問題ないよ」というのも一理あるのですが、カフェインの過剰摂取は体内に蓄積されて、健康被害の恐れがありますので、注意が必要です。
日本ではカフェインの上限摂取量を設定していないのですが、海外を見ると、「カナダ保健省」や「韓国食品医薬品安全庁(KFDA)」では、成人1日あたり400mgまでとしています。
ただし妊婦は300mg、子どもは体重1kgあたり2.5mg(30kgだと75mg)です。
コーヒー1杯で80~100mg程度ですので、1日4~5杯までになりますね。
カフェインはコーヒー以外にもいろいろな食品に入っていますので、注意してください。
紅茶や緑茶なら1杯30~40mgですが、玉露は160mgとダントツに多いようです。
まとめと補足
コーヒーは糖尿病予防に効果がある。
カフェイン抜きでも効果があるが、普通のコーヒー(カフェイン入り)の方が効果大。
すでに糖尿病を発症しているなら、食事中や食後にコーヒーは飲まない方が良い。(食後血糖値が上昇する)
ただしカフェイン抜きならOKで、クロロゲン酸は歓迎して良い。
カフェインの過剰摂取は良くないので、普通のコーヒーは1日4~5杯までにしておいた方がよい。
【補足】
クロロゲン酸が多く含まれる、生のコーヒー豆は「グリーンコーヒー」と呼ばれます。
サプリメントや、このようなパウダーでも販売されていますよ。
また、カフェイン抜きのコーヒーを探すときは、「デカフェコーヒー」「カフェインレスコーヒー」「ノンカフェインコーヒー」といった言葉で探すと、見つかります。
あのスターバックスもデカフェコーヒーを出しています。
血糖値高めのコーヒー好きなら、もうデカフェにした方が良いかもしれませんね。
コーヒーではなくて、こちらの記事を参考に、お茶にするのもありだと思いますよ。