痩せているのに2型糖尿病になった!日本人に多い4つの遺伝子多型とは?

遺伝子と糖尿病 血糖値と糖尿病のコラム

 

前回、アディポネクチンという脂肪細胞から分泌されるホルモンが、糖尿病発症リスクや寿命まで関わっているというお話しをしました。

糖尿病予防だけじゃないアディポネクチンに注目したい!

実はアディポネクチンの遺伝子には微妙な違いがあって、生まれつき血液中のアディポネクチン濃度が低い人がいます。

しかも我々日本人に多いのです。

他にも2型糖尿病に関与する遺伝子はいくつかあって、そこから「肥満ではないのに2型糖尿病になる」という、アジア人・日本人の特長が見えてきます。

今回はちょっと小難しい話ではありますが、これまで発見されている、糖尿病関与遺伝子のお話です。

遺伝子の微妙な違いって?

遺伝子は突然変異することがあります。

それが、おおよそ1%以上の割合で現れるような個体差だと、「変異」ではなく「多型」(たけい)と呼ばれます。

遺伝子多型のうち、塩基配列が1箇所だけ別の塩基に変わっているもの「一塩基多型」、通称SNP(スニップ)(Single Nucleotide Polymorphism)と呼んでいます。

塩基配列とは、DNAやRNAといった核酸の塩基部分の配列で、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4つの塩基の並び方です。
遺伝子情報は塩基配列によって決まります。
そう言えば、高校の生物の授業で習いましたよね。

SNPは遺伝子全体の中でも最も多い多型だそうで、今回話題にする糖尿病関与遺伝子の違いも、このSNPです。

アディポネクチン遺伝子のSNP

まず前回記事の関連になりますが、アディポネクチン遺伝子には3種類のSNPがあります。

G(グアニン)とT(チミン)の組み合わせによる、G/G型・G/T型・T/T型です。

このうちT/T型の血中アディポネクチン濃度が15~20μg/mlに及ぶのに対し、G/G型は、10μg/ml程度しかありません。

G/T型は両者の中間です。

G/G型はインスリン抵抗性も高く、糖尿病リスクがT/T型に比べて2倍近くになるのです。

アディポネクチン遺伝子の多型

出典:下記東京大学の資料より。

日本人の約40%は、このG/G型のアディポネクチン遺伝子を持っており、日本人の遺伝による2型糖尿病のうち約15%は、これで説明がつくとしています。

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科/日本医学会シンポジウムでの発表(PDF)

前回の記事を読んで、アディポネクチンを増やしましょう。

KCNJ15遺伝子のSNP

KCNJ15という遺伝子においてリスク型のSNPを持つ場合、2型糖尿病を発症するリスクが1.76倍になる。

さらに痩せ型体型に限ると、1.93~2.54倍にまでなるとのことです。

これは東京大学と東京女子医科大学の共同研究グループが2009/12/25に発表したもので、1700人の健常者と1568人の2型糖尿病患者を対象に解析した結果です。

健常者では6.1%しかないリスク型のSNPが、肥満になったことがない糖尿病患者では14.1%もあったという数値を表しています。

KCNJ15遺伝子のSNP

出典:東京大学大学院医学系研究科・人類遺伝学分野の資料

ヨーロッパではこのようなSNPとの関連性はないそうで、これこそ痩せ型体型の糖尿病患者が多い日本人(アジア人)特有の、2型糖尿病関連遺伝子だということです。

しかもこのリスク型KCNJ15遺伝子は、糖尿病発症促進遺伝子で、発症後も早期に重症化するそうで、とても厄介なSNPなんですね。

2型糖尿病の新規リスク遺伝子の発見|東京大学

KCNQ1遺伝子のSNP

理化学研究所が2008年8月に発表した資料によると、同研究所は2型糖尿病患者3,588人と健常者1,352人の遺伝子解析を行なった結果、KCNQ1という遺伝子のSNPが2型糖尿病の発症と強く関連することを発見しました。

理化学研究所の発表資料(PDF)

このSNPがあると、2型糖尿病の発症リスクが1.3~1.4倍になるとのことで、人口寄与危険度という指標で試算すると、日本人の2型糖尿病全体の2割に関わっているとしています。

シンガポールやデンマークでもこのSNPの関与は確認されていて、日本人に限らない糖尿病関与遺伝子だそうです。

※KCNQ1は、細胞の内側と外側でのカリウム電流を調節するDNA群の一つで、すい臓のβ細胞でもカリウム電流がインスリン分泌に関わっていることから、KCNQ1が関与していると思われます。

TCF7L2遺伝子のSNP

TCF7L2は、遺伝子情報をコピーして伝達する働きに関わる「転写因子」と言われる遺伝子で、すい臓β細胞にも現れます。

このTCF7L2にリスク型SNPが存在すると、TCF7L2自身を増加させて、インスリン分泌を低下させることが分かっています。

β細胞の機能障害になるということで、インスリン抵抗性とは無関係のようです。

糖尿病予防プログラムにおける TCF7L2 遺伝子多型と糖尿病への進行|The New England Journal of Medicine(日本国内版)

まとめ

肥満ではないのに糖尿病になったという原因には、このように遺伝子多型(SNP)がある場合があります。

祖父母や両親などが2型糖尿病という糖尿病家系では、SNPを疑ってみてもよいでしょう。

もちろんSNPがあるからといって、必ず糖尿病になるわけではありません。

特にアディポネクチンについては、大豆たんぱくなどで増やせますので、普段の食生活改善や運動を心がけましょう。

また、リスク型SNPを持っていなくても、肥満ではない糖尿病患者は数多く存在します。

その多くは「異所性脂肪」という、本来溜まるべきところではないところに脂肪が溜まっている場合で、肥満には見えないのです。

特に骨格筋(筋肉)に溜まった「脂肪筋」や、肝臓に溜まった「脂肪肝」が多く、糖尿病リスクが高まります。

異所性脂肪の詳しい記事

 

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