運動が血糖値に与える効果
糖尿病の治療法は大きく分けると3つあります。それは食事療法、薬物療法、そして運動療法です。
運動には心肺機能を高めたり、運動能力を向上させるといった効果がありますが、直接血糖値を下げる効果もあります。
血糖値は食後に最も高くなりますが、インスリンが正常に働いていれば2~3時間で元の数値に戻ります。しかし糖尿病になると血糖値が高くなったまま、なかなか元には戻りません。
ですから運動療法は、この食後に行うことが最も効果的です。
運動をするとブドウ糖が筋肉に取り込まれやすくなり、高くなった血糖値を効果的に下げることができます。
しかし運動療法の効果はそれだけではありません。
運動による血糖降下作用は運動後もすぐには衰えず、12~72時間は持続すると言われています。
つまり食後の運動は、直後の食後高血糖だけではなく、次の食後の血糖上昇も抑えることができるのです。
血糖値を下げる運動の種類は?
運動には有酸素運動とレジスタンス運動の2種類があります。
有酸素運動とは、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、エアロビクスなど大きな筋肉群をリズミカルに収縮させ、一定時間持続する全身運動を指します。
主に糖や脂肪を燃焼させる効果があります。
この有酸素運動を行うことで得られる糖尿病に対する効果としては、心肺機能や持久力などの向上、インスリン感受性の改善、脂質代謝の改善などが挙げられます。
次にレジスタンス運動とは、ダンベルやチューブなどトレーニングジムで行うようないわゆる筋トレのことを指します。
主に筋肉に負荷をかける動作を繰り返すことで筋力や筋肉量を増強させる効果があります。
レジスタンス運動を行うことで得られる糖尿病に対する効果は、筋力、筋量、基礎代謝の増加、そして血圧の上昇です。
有酸素運動、レジスタンス運動、どちらも血糖値を下げる(糖尿病に対する)効果がありますので、運動療法としては、どちらの運動をしても問題はありません。
基本的には継続することが重要ですので、あなたの好きな運動を無理なく楽しく行うことを意識するようにしてくださいね。
もちろんそれぞれの運動で別々の効果が得られるため、体力に自信がある方は両方の運動を併用して行うとより高い効果が望めます。
その際はレジスタンス運動を先に行い、次に有酸素運動の順番で行うと治療の効果はさらに高まる上、運動後に低血糖になってしまうリスクも低くなります。
どの程度の運動をするのが良いのか?
糖尿病治療の一環として運動を行う場合、どの程度の強さの運動をすればよいのでしょう?
あまり強度が高くない運動では効果は見込めませんが、強すぎると心臓に負担がかかってしまいます。そのため中強度の運動をおすすめします。
中強度というのは、一般的には最大酸素摂取量の50%に該当します。
最大酸素摂取量が分からない場合は、運動の強度を心拍数で表すカルボーネン法という計算式を使えば簡単に求められます。
目標心拍数=運動強度×(最大心拍数-安静時心拍数)+安静時心拍数
この場合の最大心拍数は220から自分の年齢を引いた数になります。
仮に60歳の方ですと最大心拍数が160ですので、安静時心拍数が65拍/分とすると、中強度の心拍数を求める式は以下のようになります。
目標心拍数=50%×(160-65)+65=112.5
つまり心拍数が112.5拍/分を目安とした運動が、この方の中強度の運動ということです。
一度運動をした直後に心拍数を測ってみると良いですね。
現代社会は運動だけでは無理
冒頭で触れたように、この運動療法の効果が続く時間は12~72時間です。
このことから最低でも3日に1回、できれば毎日運動をすることが望ましいと言えます。
しかし現代社会では、すでに定年退職をしてしまっている方や、常に動き回っているような仕事をしている方でない限りは3日に1回であっても運動を継続していくことはとても困難です。
会社勤めであれば、通勤で少し歩くだけといった日が多くなるでしょう。
ですから、運動療法だけで血糖値を安定させる(糖尿病治療を行う)のは実際問題無理なケースが多いです。
しかし有酸素運動とレジスタンス運動の併用によって効果が上がるように、食事療法とサプリなどを併用することで、仮に運動の量が不足していたとしても効果は上がります。
もちろん既に糖尿病で薬の処方を受けている方が治療法の変更を行うには、医師へご相談されてからですが、治すのは自分という意識を持って、検討してみてください。