朝鮮人参(高麗人参)は知っているけど、田七人参(でんしちにんじん)は知らないという方も多いと思います。
私も最初は朝鮮人参の商品名が田七人参なのか?くらいに思っていましたが、そもそも種類が違うというのを後から知りました。
この田七人参が、糖尿病予防にも効果があると書かれている文献やブログなどをよく見かけるので、実際何に効果があるのか、なぜ効果があると言っているのか、調べてみました。
今回は「田七人参」のすべて徹底調査です!
人参の分類
人参は呼び名がたくさんあって分かりにくいので、整理しました。
田七人参・三七人参・金不換が同じもの
田七人参は別名がいろいろあって、三七人参、田三七、三七、金不換とも呼ばれます。(学名:Panax notoginseng)
「田七」は収穫までに7年かかるから、「三七」は茎が3本、葉が7枚あるという形状、あるいは収穫に3~7年かかるところから来ているらしく、「金不換」はお金に換えられないくらい貴重という由来のようです。
原産は中国の雲南省南部から広東省西南部です。
高麗人参・朝鮮人参・御種人参が同じもの
一方、高麗人参、朝鮮人参、御種人参(おたねにんじん)と呼ばれるのが同じもので、朝鮮半島が原産です。
御種人参というのは江戸時代に日本国内で栽培が広まったときの呼び名が残っているものです。
また、水参、白参、紅参というのは、高麗人参を乾燥状態と年数によって分けた呼び名です。
ニンジンはセリ科、人参はウコギ科
ちなみに野菜としてよく食べる、赤い「ニンジン」はセリ科の植物で、分類が違います。
田七人参や朝鮮人参はウコギ科の植物で、薬草とされる本来の「人参」はウコギ科の方です。
高麗人参に比べて田七人参の知名度が低いのは、中国が規制緩和するまで長い間輸出規制していたからでしょう。
同じウコギ科の人参では、日本原産の竹節人参(ちくせつにんじん)や、カナダ・北アメリカ原産のいわゆる西洋人参があります。
中国の広東人参(かんとんにんじん)は西洋人参の輸入版です。
史実やデータから見た田七人参の効能効果
止血・鎮痛・消炎・解熱作用
田七人参は古くから、傷口の血を止める・痛みを和らげる・炎症を抑える・熱を下げるといった薬効で使われていて、中国の古書にも記載があります。
ベトナム戦争では北ベトナム軍に田七人参が使われて、効果を発揮したそうです。
動物実験でも止血作用に加えて凝固時間を短くすることが実証されていますので、これらの作用については間違いないでしょう。
外傷だけではなく、子宮不正出血や内蔵出血にも有効なのが特長です。
脳卒中・脳血栓・心筋梗塞・狭心症などの予防
これらに共通することは何だと思いますか?
答えは血管・血液の詰まりが原因です。
つまり、「動脈硬化」を防ぐ、あるいは「血栓」を溶かして血流を良くする作用があるということです。
これらの効果も古くからそう言われてきていますし、人参サポニンに共通する作用です。
傷口では止血作用があり、血管では固まらないようにするという、相反する作用があるのは不思議なことですね。
肝機能障害・ウイルス性肝炎・慢性肝炎の緩和
肝炎に対して田七人参が用いられたという記載も、よく見かけます。
「健康食品の安全性・有効性情報」サイトによると、次の記載があります。
“軽度の肝機能障害男性患者18名 (22~72歳、日本) を対象に、2 gの田七人参末を毎食後、1日3回、3ヶ月間摂取させたところ、5名の血清GOT、GPT値が低下し、全患者で副作用が見られなかったという予備的な報告がある”
血清GOT、GPT値が低下したというのは、肝機能障害が改善したことを表しています。
糖尿病予防が出てこない?
血糖値コントロールや糖尿病予防に関しては、目立った史実は出てこないのですが、後でご説明するLIONの田七人参研究データに注目すべきものがありました。
サポニンを理解してからのほうが分かりやすいので、ここでは割愛します。
実際、田七人参で血糖値が改善したという経験談や口コミはよく目にします。
がん、痛風、認知症、更年期障害ってどうなの?
「がん」については、前立腺がんへの臨床研究が報告されていますが、まだデータ不足です。
乳がん、膵臓がん、白血病なども同様に、まだデータが不十分で、研究段階と言えます。
足に突然激痛が走る「痛風」に対してはどうでしょうか?
試験データが見当たりませんので、口コミの域を出ませんが、田七人参には鎮痛作用、消炎作用がありますから、痛風の痛みを和らげ、腫れが引くといったことは当然考えられます。
しかし痛みの元である尿酸値を下げることとの因果関係を示す根拠はありません。
サポニンで血流が良くなるのと、利尿作用で尿酸の排泄が促されるのかもしれませんね。
「更年期障害」についてもデータがありませんが、よく言われる効能効果です。
後ほどご説明する、ジンセノサイドRb1というサポニンには、副腎皮質ホルモン分泌促進作用もありますので、顔のほてり・のぼせ・大量の発汗といったホットフラッシュを緩和するなどの効果が出るのかもしれません。
ホルモンバランスや自律神経は、「うつ病」にも関係しています。
また、先ほどのジンセノサイドRb1には中枢神経抑制作用・精神安定作用もあり、逆にジンセノサイドRg1というサポニンには中枢神経興奮作用があります。
この相反する作用によってバランスが保たれることも考えられます。
「認知症」の予防については研究段階です。
認知症で最も多い「アルツハイマー型認知症」の原因は、アミロイドβという脳神経細胞の老廃物が蓄積することと言われています。
最近の研究では、脳に入った好塩性古細菌(バクテリアの一種)がアミロイドβを蓄積させているという報告もあります。
田七人参に関連する作用としては、免疫力強化や記憶学習機能改善作用でしょうか。
いずれにしてもアルツハイマー型認知症はまだ解明されていない領域ですので、効果の証明も困難です。
一方「脳血管性認知症」の場合は、脳梗塞や脳出血の後遺症ですから、コレステロールの改善や、血栓による詰まりを無くす田七人参は、予防効果があると言えます。
有効主成分のサポニンを解明する!
すでにサポニンやジンセノサイドという言葉を使ってしまいましたが、田七人参にはビタミン・ミネラル・アミノ酸などの種類がすごく豊富に含まれているので、何がどこでどう効いているのかを正確に特定するのは困難です。
しかし、主成分である「サポニン(saponin)」に注目すればある程度の因果関係が分かります。
詳しくご説明しますので難しいところは読み飛ばしても結構です。
サポニンの種類・分類
一言でサポニンと言ってもサポニンを構成する成分によって、薬理作用が違います。
まず糖(主にオリゴ糖などの多糖類)と糖以外のものがくっついたものを「配糖体(グリコシド、glycoside)」と言います。
配糖体の中で、糖じゃない部分(アグリコン,aglycone)がサポゲニン(sapogenin)と言われるものを総称してサポニンと言います。
サポ(sapo)は石鹸を意味しますが、サポニンも水とかき混ぜると泡が出て、界面活性作用があります。
サポゲニンにはトリテルペン系とステロイド系があって、今回お話しするのはトリテルペン系サポゲニンのサポニン、「トリテルペノイドサポニン」です。
またトリテルペン(triterpen)には骨格(構造)の違いで、ダンマラン系(dammarane)とオレアナン系(oleanane)という分類があります。
甘草(カンゾウ)や桔梗(キキョウ)といった多くの薬草や、大豆などに含まれるサポニンはオレアナン系ですが、人参にはオレアナン系よりも希少なダンマラン系の「ジンセノサイド(ジンセノシド、ginsenosides)」と言われるサポニンが多く含まれています。
さらに細かくすると、ダンマラン系トリテルペンには、パナキサジオール系とパナキサトリオール系という分類があります。
ジンセノサイドは30~40種類以上あるとも言われていて、単にサポニンと言っても、入っているジンセノサイドの種類や組み合わせ、量などによって、作用が変わってくるのです。
田七人参のサポニンと薬理作用
ここからは田七人参サポニンの効能効果、糖尿病予防になるのかというお話しです。
「健康食品の安全性・有効性情報」によると、次のように記載されています。
“三七人参(田七人参)の主成分はジンセノシドginsenoside Rb1,Rg1,Rg2である。
その他少量のginsenosideRa,b2,d,eを含み、Ro はないかあっても極めて微量である。“
主成分の薬理作用を上げてみましょう。(単独で存在すると言われているもの)
ジンセノサイドRb1 | 中枢神経抑制作用、鎮痛作用、精神安定作用、催眠作用、解熱作用、血清蛋白質合成促進作用、中性脂肪分解抑制および合成促進作用、コレステロール生合成促進作用、プラスミン活性化作用、RNA合成促進作用、副腎皮質ホルモン分泌促進作用 |
ジンセノサイドRg1 | 中枢神経興奮作用、抗疲労作用、疲労回復作用、記憶学習機能改善作用、DNA・RNA合成促進作用、プラスミン活性化作用 |
20S-ジンセノサイドRg2 | 血小板凝集抑制作用、プラスミン活性化作用 |
この中で、動脈硬化・脳卒中・心筋梗塞に関連するものは、まず「プラスミン活性化作用」です。
プラスミンは、血管にできた血栓を溶かして血管の壁を元に戻す成分ですので、それを活性化するということは血栓による詰まりを減らすという効果があります。
血栓は血管にできた傷を修復するために血小板が集まってできたかさぶたですが、それ以外に余計に集まると血管を詰まらせます。
Rg2の作用である「血小板凝集抑制作用」はそれを防ぐ効果があります。
また、Rb1の「(善玉)コレステロール生合成促進作用」も血中コレステロールの状態を良くして動脈硬化を防ぎます。
次に肝機能障害・肝炎の改善ですが、上記3種類のジンセノサイド単独では、直接関連する作用は見当たりません。
しかし、上記以外のジンセノサイドには抗肝炎作用や解毒作用・脂肪代謝促進作用・中性脂肪減少作用などと書かれているものもあります。
肝臓は解毒を行っているところですし、肝臓に中性脂肪が付く脂肪肝は肝機能障害の原因になりますので有効です。
試験データもありますし、ジンセノサイドは組み合わせやバランスによっても作用が変わりますので、解明できていない部分も多いのです。
糖尿病予防についても同じことが言えます。
上記3つには直接記載はありませんが、他のジンセノサイドには抗糖尿作用と書かれているものもあります。
一部のブログなどでは、Rb1にある「中性脂肪分解抑制および合成促進作用」というのがインスリン類似作用だから糖尿病に効くと書かれていることもありますが、これはインスリンの作用のほんの一部ですし、中性脂肪を分解して血糖を増やすことを抑制するというだけです。
それではなぜ、血糖値が下がった人がいるのか?
ひとつは、中性脂肪やコレステロールなど脂質代謝に関わるところがプラスに働きますので、間接的に糖尿病予防にもなります。
それと次にお話するパナキサトリオールです。
パナキサトリオールが糖代謝を高め血糖値を下げる
LIONは様々な研究を行っている企業ですが、糖代謝に関する研究も行っています。
LIONの研究発表によると、
「田七人参」の微量含有成分「パナキサトリオール」に血液から筋肉への糖の取り込み量を増加させ、高血糖を抑制する作用があることを発見。
社内ヒト試験により「パナキサトリオール」は、食後血糖値だけでなく空腹時血糖値にも効果があることを確認。
ということで、田七人参と血糖値の因果関係を示しています。
パナキサトリオールとは、サポニンの分類でお話しした、ダンマラン-パナキサトリオール系のジンセノサイド(Rg1,Rg2など)から、糖との結合を切り離した、糖じゃない方(トリペルテン)のことです。
糖と結合した配糖体サポニンよりも、結合していないトリペルテンだけの方が、糖代謝を高めると言っているのですね。
LIONはその後、パナキサトリオールを高配合した加工粉末を使って、製品化しています。(田七人参習慣)
ところで、サポニンは糖と結合した配糖体ですので、多糖類と同じく、グリコシダーゼという酵素によって分解されます。
また一部は腸内細菌によっても分解されます。
ということは、パナキサトリオールを分離抽出しなくても、体内でパナキサトリオールになって、糖代謝を高めるのではないか、というのが私の見解です。
田七人参は血糖値コントロールにも作用することが分かりました。
その他の田七人参特有成分
一般的なアミノ酸やビタミン・ミネラルを除く、サポニン以外の田七人参特有成分にも触れておきましょう。
デンシチン | デンシチンは田七人参特有のアミノ酸成分です。
田七人参の止血作用や鎮痛作用はデンシチンによるものと特定されていて、高麗人参にはありません。 |
田七ケトン | 田七ケトンAとBの2種類があり、田七ケトンAは血中の総コレステロール値を下げたり、血栓を除去したりします。
田七ケトンBには、デンシチン同様の止血作用があります。 |
有機ゲルマニウム | 有機ゲルマニウムには抗ウイルス作用があります。
体内のインターフェロンを誘発し、ウイルスの増殖を抑え、破壊するという効果が期待できます。 |
田七人参の安全性:禁忌や副作用について
「健康食品の安全性・有効性情報」によると、田七人参は妊婦中・授乳中は禁忌(使用してはいけない)とされています。
副作用については、経口摂取で口渇、発赤、神経過敏、不眠、吐き気、嘔吐などの副作用があり、まれに痰血、鼻血、歯茎の出血、月経の量が多くなるなどの出血傾向、皮膚炎が見られることがあると書かれています。
ただし、副作用には一時的な好転反応(東洋医学では瞑眩反応)の場合もあり、再使用すると発生しないケースがあります。
お薦めの田七人参-「白井田七」
田七人参は、産地や栽培方法など、モノによってサポニン(ジンセノサイド)のバランスや量が違い、効果も変わってきます。
元々、ビタミン・ミネラルなど、たくさんの成分が含まれていますし、未知の部分もありますので、加工粉末よりも、品質の良い田七人参をそのまま使った方が、田七人参本来の効果が期待できて良いのではないでしょうか。
「白井田七」は白井博隆という日本人が開発した有機栽培の田七人参で、商品名です。
日本国内では一番支持されているのではないでしょうか。
支持されている一番の理由は、安心と品質だろうと思います。
栽培地はもちろん中国ですが、農薬と化学肥料が当たり前の中国で、雲南省の奥地に入って土壌作りから始めています。
その後世界で初めて無農薬田七人参の栽培に成功し、7年後の2006年には国際基準に基づくIFOAM有機認証を取得、その翌年に、日本の有機JAS認証も取得しています。
加工は日本国内の有機JAS認定工場ですし、販売は、さくらフォレスト株式会社が運営する「さくらの森」という品質優先のコンセプト商品です。
田七人参をそのまま錠剤にしていますので、原料の98%が田七人参、つなぎの有機玄米が2%だけの完全無添加。
サポニンの含有量も10%以上と突出しています。
もっと安い田七人参もありますが、お財布が許すなら迷うことなく「白井田七」をお薦めします。