健康診断で血糖値が基準よりも高いという結果が出たら、「えっ?私ヤバイのかも」と思ってドキドキしますよね。
健康診断ですぐに糖尿病と診断されるケースは少ないですし、再検査の結果、まだ糖尿病ではないと聞いて、ほっとするかもしれません。
しかし、仮に再検査で問題がなかったとしても、1回でも高血糖という結果が出れば、放置するのは危険です。
なんとか予防をして血糖値を正常にしておきたいものです。
ただ、予防をしようにも、なぜ高血糖になったのか、原因が分かっていないと予防のしようもありませんね。
血糖値が上がる仕組みや理由が分かれば、それに対する対策も立てやすくなります。
そこで今回は高血糖になってしまう原因を、詳しく解説します。
食べた糖質はどうなっていくの?
高血糖の原因を知る前に、まず糖質が持つ役割と、消化と代謝の仕組みから理解しましょう。
日本人の平均的な1日の摂取カロリーは2,000kcalですが、このうち60%、つまり1,200kcalを糖質から摂取しています。
糖質はその大きさから、単糖類、二糖類、多糖類の3種類に分けられますが、この中で最も多く摂取される糖類は多糖類のでんぷんです。
多糖類であるでんぷんは、口腔内で唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素の働きによって麦芽糖(二糖類)に分解され、分解しきれなかったでんぷんは十二指腸ですい液に含まれるアミラーゼによって麦芽糖まで分解されます。
その後、小腸で麦芽糖(マルトース)などをブドウ糖にまで分解するマルターゼ、ショ糖をブドウ糖と果糖に分解するスクラーゼ、乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解するラクターゼなどの消化酵素の働きによって単糖に分解、吸収され肝臓に運ばれます。
肝臓に運ばれた一部のブドウ糖は、肝細胞でグリコーゲンという物質に変えられます。
このグリコーゲンとはブドウ糖を体内に蓄えておくためのもので、血液中のブドウ糖が少なくなるとまたブドウ糖へ分解され血液中に流れていきます。
そしてそれ以外のほとんどのブドウ糖はそのまま心臓へ向かい、心臓から全身の血管へと流れていきます。
血糖値が上がるというのは、この血管へ流れ込むブドウ糖の量が増えることを意味します。
ブドウ糖を体内に蓄えておくために変換されるグリコーゲンですが、このグリコーゲンが使われないまま貯まっていくといずれ貯蔵量が限界を超えてしまいます。
限界を超えグリコーゲンに変換されずに余ったブドウ糖は、中性脂肪に変換され、脂肪細胞に蓄えられ体脂肪になっていきます。
糖質を摂取しすぎると太ってしまう理由はここにあるのです。
インスリンとグルカゴンは血糖値のシーソーだ!
次はこの血液中に流れるブドウ糖の量を調節している、インスリンとグルカゴンという2つのホルモンについてご説明します。
インスリンは食事によって血糖値が上がった際に、すい臓のβ細胞から分泌されるホルモンです。
血糖値を下げる働きをするほぼ唯一のホルモンで、ブドウ糖をエネルギー源として体中の細胞に運んだり、グリコーゲンに変換し肝細胞に蓄えたりして、ブドウ糖の量をコントロールします。
血糖値を下げる働きをするインスリンに対して、血糖値を上げる役割を果たすホルモンがすい臓のα細胞から分泌されるグルカゴンです。
具体的には、肝細胞に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に分解した上で、グリコーゲンの合成を抑制する。体内のアミノ酸からブドウ糖を合成して血糖値を上昇させるといった働きをします。
この2つのホルモンが正常に機能することで、血糖値のコントロールがされ、高血糖や、低血糖を防いでくれているのです。
高血糖になる(糖尿病発症)の原因
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類があります。
1型糖尿病はインスリンがまったく、もしくはほとんど分泌されないことによって発症するもので、遺伝的な要素が強く影響します。
これに対し2型糖尿病はインスリンの分泌量が少なくなる、もしくはインスリンの働きが正常でなくなることによって発症します。日本人の糖尿病患者の95%はこの2型糖尿病であるといわれています。
そのためここでは2型糖尿病が発症する原因に絞って詳しくご説明します。
2型糖尿病を発症する原因にも遺伝が絡みますが、生活習慣が重要です。
確かに糖尿病を発症した家族がいる方はそうでない方に比べ、糖尿病を発症する確率は高くなっています。
遺伝と言われてしまうと自分ではどうしようもないと思ってしまいますよね。
しかし糖尿病自体が遺伝するわけではありませんし、あくまでも糖尿病になりやすい体質が遺伝するということですので、規則正しい生活を送ることで糖尿病を防ぐことは十分に可能です。
さて、糖尿病を発症するもう一つの原因である生活習慣ですが、もちろん不規則な生活を送っていたらそれだけで糖尿病を発症するというわけではありません。
これまでご説明してきたように、食後に上がった血糖値は、インスリンの働きによって約2時間後には正常な数値に戻ります。
しかしこのインスリンが正常に機能しなくなり分泌が少なくなってしまうと、血糖値を下げることができず、高血糖の状態が食後約2時間を過ぎてもずっと続くことになります。
このインスリンの働きを悪くする生活習慣が、糖尿病発症の原因というわけです。
例えば糖質の取り過ぎや暴飲暴食を続けると、常にインスリンを大量に分泌するようになり、やがてすい臓が疲れてしまい分泌量が減ってしまいます。
また運動不足になると、ブドウ糖をエネルギーに変える筋肉量が減っていきます。これによって内臓脂肪がたまりやすくなりインスリンの働きが悪くなります。
ほかにも加齢やストレスなどもすい臓に負担をかけ、インスリンの分泌を減らしてしまう原因となります。
ちなみに肥満も糖尿病の原因の一つと言われます。
これはもちろん間違いではありませんが、日本人は欧米人に比べ、元々インスリンの分泌力が弱いので、痩せていても糖尿病を発症する可能性は少なくありません。
肥満ではないから大丈夫といった安心は禁物です。
急激な血糖値の上昇が起きるとき
一般的に血糖値の測定は、10時間以上一切食べ物(水以外)を摂取しない状態で測った空腹時血糖値、食事を開始してから2時間後に測った食後血糖値などが一般的です。
しかし食事で糖質を多く含む高GI食品(※1)を摂っても、一旦食後の血糖値が急に高くなるものの、インスリンが正常に働いているため2時間後には正常な状態に戻るといったケースがあります。
この場合、空腹時血糖値や食後血糖値では異常が発見されにくくなります。
この血糖値が急激に上下する状態はグルコーススパイクと呼ばれていて、糖尿病の発見が遅れてしまうリスクが高く、危険な状態なのです。
グルコーススパイクを回避するには、食物繊維を含む野菜などから食べ始めたり、白米よりは玄米、小麦粉のパンよりはライ麦や全粒粉のパンといった形で、できるだけGI値の低いものを摂取するよう心掛けると良いです。
ただし、食べ過ぎは禁物。玄米や全粒粉のパンは血糖値の上昇が緩やかにはなりますが、糖質量が少ないというわけではありません。
(※1 GIとは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食べてから2時間以内に血液中に入る糖質の量を計ったもの。つまり食品に含まれる糖質の吸収度合いを示した指標で、食後血糖値の上昇度が分かる。高GI食品は一気に血糖値を上昇させる。精白米・食パン・うどんや、ジャガイモ・トウモロコシなども高GI食品です。)
糖尿病は一旦、発症してしまうと完治が非常に困難なばかりか、神経障害、網膜症、腎症などさまざまな合併症を引き起こす危険もあります。
健康診断で1回でも高血糖という結果が出たら決して放置せずに医師に相談した上で適切な予防をするようにしてください。
また、当サイトなども参考にして頂き、普段の生活を改善してください。