ステロイド糖尿病について知っておこう

ステロイド糖尿病 血糖値と糖尿病の知識

ステロイドに縁がない方には予備知識になりますが、ステロイドの副作用の中には血糖値を上昇させて糖尿病を発症するというものがあります。

 

ステロイドは「炎症に効く」薬ですので、様々な病気に使われます。

縁がないことに越したことはないですが、糖尿病との関係については知っておいて損はないでしょう。

また、すでに何らかの治療に使われているか、使う可能性があるならば、ぜひ心得ておきたいところです。

ステロイド糖尿病の定義

「ステロイド糖尿病」は、ステロイドを使ったことによって糖尿病になったのですから、ステロイドを使わないようにすれば糖尿病も治るものです。

 

結果論的ですが、使うのをやめても改善しなければ、それはほんとの糖尿病、2型糖尿病で、ステロイドをきっかけとして、発症してしまったということになります。

 

つまりそういう方は、元々遺伝的に糖尿病家系であるとか、肥満であるといった、糖尿病になる要因を持っていた方が多いのです。

 

全国の大学病院での症例調査によると、ステロイド中止後の糖尿病について、「治った53%」「軽くなった 25.5%」「変わらない 12.5%」「悪化した 4%」「死亡に至った 4%」「経過観察中 1%」というデータがあります。

そもそもステロイドって何だっけ?

ステロイドは副腎から分泌される「副腎皮質ホルモン」で、50種類くらいあります。

そのうち、糖質コルチコイド(コルチゾールなど)に分類されるホルモンを人工合成したものが、医薬品の「ステロイド」です。

 

糖質コルチコイドには強力に炎症を抑える機能がありますので様々な病気の治療に使われますが、高血圧・糖尿病・骨粗鬆症などの発症リスクといった副作用が多いことでも知られています。

おまけに全身の細胞へ無差別に機能するという性質がありますので、厄介なのです。

ステロイド糖尿病はどれくらいで発症するの?

ある学説では、ステロイドを服用した患者さん全体のうち、約8%が糖尿病を発症すると言われています。

 

一般的に、1日あたりの投与量が多く、長期になるほど、発症の可能性は高くなります。

 

投与開始から2〜3カ月以内に血糖値の上昇が現れることが多いとも言われますが、1~2週間で10数回程度の点滴でも発症することがありますし、病院で大量投与される場合には、投与後48時間以内に高血糖になることもあるようです。

 

東北大学での症例調査によると、1日30mg以上、3ヶ月以上の投与ですと、かなりの高確率で発症しています。

 

投与の仕方でも違いがあり、点滴や内服薬での発症が一番多く、皮膚科や眼科疾患などに使われるステロイド外用薬で発症することもあります。

気管支喘息の治療で使われる吸入ステロイド薬は、微量ですので長期に使用しても発症しません。

 

病気によっても違いがあり、白血病、再生不良性貧血、リウマチ性疾患、肝疾患の場合は、比較的少量のステロイド投与でも、早期に糖尿病を発症しやすいことが知られています。

ステロイド糖尿病の発症メカニズム

なぜステロイドが血糖値を上昇させるのか、ちょっと難しい話ですが、ご説明します。

 

ステロイド薬の糖質コルチコイド(コルチゾール)は、インスリンの作用を低下させて、ブドウ糖の取り込み・利用を阻害します。(インスリン抵抗性が高まる)

そうすると身体はブドウ糖が足らないと勘違いして、筋肉ではタンパク質をアミノ酸に分解してアミノ酸からブドウ糖を生成します。

また脂肪細胞では脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解し、グリセロールは肝臓に回り、肝臓でブドウ糖が生成されます。(糖新生と言います)

 

更に糖質コルチコイドは、膵臓でのインスリン分泌も抑制します。

 

つまり、糖新生でブドウ糖は増え、インスリンは減るので血糖値は下がらず、高血糖になるというわけです。

ステロイド糖尿病の特徴と治療法

 

ステロイド薬の投与による血糖値の上昇は、投与後2~3時間に始まり、5~8時間後がピークとなります。

ですから、食後血糖値の上昇にかかるのは、昼食もしくは夕食ということになります。

純粋にステロイドの影響によるものなら、翌朝の空腹時血糖値は正常であることが特徴です。

随時高血糖になってきたら、重度のステロイド糖尿病、もしくは2型糖尿病であると言えるかもしれません。

 

ステロイド糖尿病の治療は、基本的には2型糖尿病の治療と変わりません。

食事・運動療法に加えて、薬物療法を検討します。

症状が軽度であれば、糖質分解酵素を阻害する「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、「グリニド薬」などの食後血糖改善薬を使用します。

随時血糖値が高くなったり、ステロイド治療が長期になる場合は、昼食や夕食時のインスリン投与を検討します。

ステロイド糖尿病の予防とまとめ

ステロイドは使わないに越したことはありません。

しかしやむを得ず使用する場合は、血糖値対策も合わせて意識しましょう。

 

血糖値を上げるものは「糖質」ですので、糖質制限と運動が基本です。

肥満の方はカロリー摂取も減らすことです。

 

また、ステロイド治療を始めたら、定期的に血糖値も測りましょう。

 

仮にステロイド糖尿病を発症しても、2型糖尿病にならなければ、糖尿病合併症を発症することもありませんので、あわてずに対処してください。

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