糖尿病の本当の怖さは三大合併症だ!

糖尿病の三大合併症について 血糖値と糖尿病の知識

糖尿病は一旦、発症してしまうと完治する可能性はとても低い病気です。

仮に健康な人と同じような生活を送ることが可能だとしても、基本的に「食事療法」と「運動療法」などの治療自体は継続して行う必要があり、一般的な生活を送るのにもさまざまな制限を強いられることになります。

つまり、一生付き合う病気を抱え込むことになります。

 

そして糖尿病の恐ろしさはそれだけではありません。

少し症状が良くなったからといって治療を止め、高血糖に戻ったにも関わらず放置していると神経障害、網膜症、腎症といういわゆる三大合併症の可能性が増します。

さらに三大合併症のほかにも、動脈硬化、感染症、壊疽(えそ)などさまざまな合併症を発症する危険があります。

そして合併症を発症してしまうと、完治の可能性はたいへん低くなります。

そう、糖尿病の本当の怖さは、合併症なのです。

今回は三大合併症を中心に糖尿病と合併症の怖さについて詳しくご説明します。

糖尿病性神経障害

糖尿病の合併症として最も早期に発症する上、最も頻度が高いのが、糖尿病性神経障害です。

原因は一般的に神経細胞内にソルビトール(リンゴ、ナシなどの果物や海藻類など含まれている糖アルコールと呼ばれる物質)が蓄積されるため。

あるいは、高血糖によって細い血管が詰まってしまい、神経に血液が通わなくなるためなどと言われていますが、それ以外も諸説あり、はっきりとした理由はまだ明らかになっていません。

糖尿病性神経障害の症状

糖尿病を発症し血糖の高い状態が続くと、まず手や足先などの末梢神経から障害が起こります。

症状としては手足のしびれや痛み、足先の異常な冷え、虫が這っているような知覚異常などが起こります。

この段階で適切な治療を受けずに放置していると、症状はどんどん進行していきます。

運動神経障害により、全身の筋肉が萎縮し、顔面神経麻痺などの症状が起こり、最終的には手足のしびれや痛みがさらにひどくなる一方、神経は働きを失っていくことで足にやけどや傷を負っても気づきにくくなります。

そしてそこから細菌に感染して細胞が壊疽(えそ)の状態になり、最悪の場合、足を切断しなくてはならなくなる可能性もあります。

 

また糖尿病性神経障害には末梢神経障害のほかに自律神経障害もあります。

こちらは手足の痛みやしびれではなく、胃もたれや便秘、下痢、起立性低血圧による立ちくらみ、排尿困難やインポテンツなどの症状が起こります。

また低血糖が起こっても動悸や発汗などの警告症状が現れずに重症化する、心筋梗塞が起こっても痛みに気付かず重篤化を招くといった危険性もあります。

糖尿病性神経障害を防ぐために

糖尿病性神経障害の症状がまだ軽い初期の状態であれば、血糖コントロールを正常化するだけで、神経障害の諸症状を改善できることもあります。

そのためにも重要なことは少しでも早い対応です。

おすすめは日本糖尿病対策推進会議で配布している足の症状を自分でチェックできる「足チェックシート」です。

少しでもおかしいなと感じたらすぐにチェックを行い、チェック項目に「はい」があった場合はすぐに医師に相談をし、治療を始めてください。

糖尿病網膜症

日本において成人の失明原因の第一位となっているのは、実は糖尿病網膜症です。

この糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜が障害を受けて視力が低下していき、最悪の場合、失明してしまう病気です。

一般的に発症の時期は糖尿病性神経障害よりも遅く、糖尿病が発症して5~7年から10年の間に発症します。

糖尿病網膜症の症状

糖尿病網膜症の症状はその進行具合によって3つの段階があります。

①単純糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の初期段階の症状です。細い血管の壁が盛り上がってできる血管瘤(毛細血管瘤)や、小さな点状出血、それよりやや大きめの斑状出血、脂肪やたんぱく質が沈着してできたシミ(硬性白斑)、血管がつまってできたシミ(軟性白斑)などです。

この段階では視力には全く影響がないこともあり、自覚症状はまだありません。

②増殖前網膜症

単純糖尿病網膜症で軟性白斑が多数出てきたり、血管がつまって酸素欠乏になった部分があちこちに出てきたりすると、足りなくなった酸素を供給するために新生血管を作り出す準備を始めます。

この段階を増殖前網膜症といいます。この時期になるとかすみなどの症状を自覚するケースもありますが、依然として全く自覚症状がないこともあります。

③増殖網膜症

新生血管が破れて起こる硝子体出血、増殖膜、網膜剥離という重症な段階です。

硝子体は眼球の中の大部分を占める透明な組織のため、ここに出血が起こると、視野に黒い影やゴミの様なものが見える飛蚊症と呼ばれる症状が起きたり、出血量が多いと急な視力低下が起こります。

ここで初めて自覚症状がありますが、この段階になると自然治癒の可能性は非常に低く、手遅れに近い状況だといえます。

糖尿病網膜症を防ぐために

糖尿病網膜症の恐ろしいところは、かなりの段階になるまでほとんど自覚症状がないところです。

気づいた時にはもう手遅れになっているということも少なくありません。

そのため早い段階から定期健診を行い、少しでも異常があればすぐに治療を行うことで進行を抑えることが可能になります。

糖尿病腎症

糖尿病腎症は、三大合併症の中で一番遅く糖尿病を発症してから10~15年以上と長い歳月をかけて発症するケースがほとんどです。

原因は、糖尿病により高血糖状態が続くことで、全身の動脈硬化が進行し、毛細血管の塊であり腎臓の中にあるろ過装置である、糸球体でも細かな血管が壊れ、網の目が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなることと言われていますが、糖尿病性神経障害と同様にはっきりとした原因はまだ明らかになっていません。

 

ちなみに2016年2月に日本透析医学会が発表した「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2014年末時点での国内の透析人口は、32万448人で、そのうち糖尿病腎症が11万8,081人と最も多く、透析患者全体の38.1%を占めているという結果が出ています。

糖尿病腎症の症状

糖尿病腎症の症状はその進行具合によって5つの段階があります。

①第1期(腎症前期)~第2期(早期腎症期)

微量のアルブミン(たんぱく質の一種)が尿中に出ます。

ただしこの段階では、まだ蛋白尿の数値も正常値とさほど変わらず、自覚症状もほとんどありません。

②第3期A、B(顕性腎症期)

腎機能の低下が進行していきます。その結果、尿に含まれるアルブミンも多くなってきます。

この段階になると浮腫(足がうくといった状態が足にも、全身にも見られる)、息ぎれや胸苦しさ、食欲不振や満腹感といった自覚症状が出てきます。

また高脂血症などの合併症が発症することもあります。

③第4期(腎不全期)~第5期(透析療法期)

この段階になると透析が検討、実施されます。

嘔気あるいは嘔吐筋肉の強直、筋肉や骨に痛みがある手のしびれや痛み、腹痛と発熱などさまざまな自覚症状が出てきます。

場合によっては透析のほか、腎移植が検討されることもあります。

糖尿病腎症を防ぐために

糖尿病腎症は第3期以降になってしまうと、進行を遅らせることはできても良い状態に戻すことはできなくなります。

そのため定期健診を行い尿検査の結果に十分、注意する必要があります。

 

このように糖尿病はさまざまな病気を引き起こす可能性が高い非常に恐ろしい病気です。

もし今、少しでも血糖値が高いのであれば、常に血糖コントロールをし、正常な状態を保てるよう、日々の生活習慣を改め直すようにしてくださいね。

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