クロムは血糖値を下げるために積極的に摂るべきか?

クロムと血糖値 血糖値を下げる成分

クロムというミネラルが、血糖値を下げて糖尿病の予防や改善に効果があると、聞いたことがあるかもしれません。

しかし、実際にクロムがどんな働きをしていて、積極的に摂取したほうが良いのかというところまで知っている方は、案外少ないのではないでしょうか。

今回はこのクロムについて、詳しくお話ししたいと思います。

クロムは微量必須ミネラルである

微量だけども人体には欠かせない、必須ミネラルと言われる元素が16種類あります。

どれも体内では作れないので、食品などから摂取する必要があるものです。

どれくらい微量かというと、体重の約95%は水素(H)・炭素(C)・酸素(O)・窒素(N)で、残りの元素が全部で16種類です。

更に必須ミネラルは1日の必要量が100mg以上の多量ミネラルと100mg未満の微量ミネラルに分けられます。

多量ミネラルは7種類で、必須ミネラルの99.7%を占めます。

(カルシウム50.8%・リン29.4%・カリウム・イオウ・塩素・ナトリウム・マグネシウム)

残りの0.3%が9種類の微量ミネラルというわけです。

(鉄・亜鉛・銅・ヨウ素・セレン・マンガン・モリブデン・クロム・コバルト)

やっと最後から2番目にクロムが出てきましたね。

つまりクロムはコバルトと並んで、最も少なくてよい微量必須ミネラルなのです。

 

ちなみにクロムには3価クロムと6価クロムがありますが、ここでお話ししている人体に必要なクロムは3価クロムです。

6価クロムは人工的に産出される大変毒性が強い有害物質で、自然界にはほとんど存在しません。

クロムの働きと欠乏症

クロムの働きとしては、まず血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを強化します。

具体的には、インスリン受容体と結合してインスリン感受性を活性化する、GTF(Glucose Tolerance Factor:耐糖因子)という物質があるのですが、GTFの主成分であるクロモデュリンの材料となっているのがクロムなのです。

またクロムには、脂肪酸やコレステロールの合成を促して、脂質の代謝を促進する働きもあります。

ですから、クロムが欠乏すると糖代謝や脂質代謝が異常になり、糖尿病・高血圧・動脈硬化などを引き起こし、末梢神経障害や角膜障害を発症することもあります。

クロムの過剰摂取や医薬品との相互作用

厚生労働省が提示しているクロムの食事摂取基準量は、成人1日あたり10μgです。

1μg(マイクログラム)は1mg(ミリグラム)の1000分の1、つまり100万分の1g(グラム)です。

厚生労働省は耐容上限量を定めていませんが、世界保健機構(WHO)によると1日あたり250μgを超えるべきではないとしているようです。

食事以外で積極的に摂らない限り過剰摂取になることはありませんが、過剰摂取が長期間に渡ると、下痢・嘔吐・腹痛に始まり、肝障害や造血障害・腎尿細管障害・中枢神経障害を引き起こすことがあります。

更に糖尿病でインスリン治療を行っている場合は低血糖症になることもありますし、非ステロイド性抗炎症薬での副作用も指摘されています。

クロムを積極的に摂って良い場合

Ⅱ型糖尿病患者を対象に、クロムとシステインの複合体を摂取させると、インスリン抵抗性の改善が見られたという検証データがあります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22674882 (英語)

このことから、高血糖の原因がインスリン抵抗性にある場合は、過剰摂取にならない範囲でクロムを積極的に摂取すると、改善が期待できるといえます。

ただ、糖尿病予防の段階から積極的に摂るほうが良いかとなると、疑問が残ります。

普通は食品からの摂取量で足りているはずですし、まず糖質をコントロールするほうが先だと思うからです。

クロムを多く含む食品

3価クロムの体内への吸収率は非常に低くて、2~3%と言われています。

ですから血糖値が高めの人は、クロムの食品からの摂取については、積極的に心がけて良いでしょう。

クロムは肉類・魚介類の他、穀類や野菜にも含まれていますので、意識しなくても摂れているはずですが、特にクロムを多く含む食品としては、次のようなものがあります。

牛肉・鶏肉・卵・穴子・アサリ・うなぎ・ひじき・アーモンドなど。そばも多いですが糖質ですので除外します。

クロムのサプリメントは必要か?

国内におけるクロムのサプリメントとしては、Dr.フェリンGTF(ドクターフェリンGTF)という製品が有名です。

1粒に3価クロムを50μg配合しており、1日あたり4粒が目安なので、200μgになります。

吸収率も食品より高いので、WHOが推奨している上限値の250μgに迫る量です。

 

アメリカなどのサプリメントでは、GTF型クロムや、クロミウム・ピコリネート(ピコリン酸クロム)という形で、たくさん販売されていますが、ほとんどどれも1日で200μgです。

Dr.フェリンGTFと比較すると桁違いに安いですね。

 

いずれにしても、1日200μgを長期間摂取するとなると、過剰摂取のほうが気になります。

摂るなら半分にしたほうがよいでしょう。

 

実を言うと、クロムのサプリを摂るよりもマルチビタミンミネラルをお薦めします。

先ほど出てきたピコリン酸クロムのピコリン酸は、クロムの取り込みに必要なもので、ナイアシンビタミンB6によって作られます。

また、ビタミンCを一緒に摂るとクロムの吸収率が高まるそうですし、亜鉛もインスリンの分泌には不可欠です。

マルチビタミンミネラルには、これらの成分やクロム酵母も入っているものもありますし、不足しがちな栄養素をまとめて補給できる、最も優れたサプリメントなのです。

健康な方もマルチビタミンミネラルはおすすめします。

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