お酒・アルコールと血糖値、糖尿病との微妙な関係とは

お酒・アルコールと血糖値、糖尿病 血糖値と糖尿病のコラム

飲酒、お酒については諸説あって、何が正しいのかよく分からないことがあります。

お酒の種類による成分の違いが影響しているものと、アルコールそのものによる影響とが混在しているからです。

また、研究が進んで新たな発見が、それまでの常識を覆すこともあります。

今回はお酒・アルコールと、血糖値・糖尿病を中心とした身体への影響をまとめてみました。

お酒の糖質量による血糖値への影響

血糖値を上げるのは糖質ですので、まず糖質量の違いからみたお酒の影響があります。

これは「血糖値を下げる食事・食べ物・食品」でも取り上げていますが、蒸留酒(スピリッツ)は糖質ゼロですので、飲んでもブドウ糖で血糖値が上がることはありません。

主な蒸留酒は、焼酎・ウィスキー・ブランデー・ウォッカ・ラム酒・ジンなどで、アルコール度数が高いお酒が多いです。

一方、醸造酒の方は、糖質を含みますのでなるべく控えたほうがよいとしています。

主な醸造酒と糖質量は、ビール(350mgで11~12g、ただし糖質オフ銘柄を除く)・日本酒(1合(180mg)で9~10g)・ワイン(グラス1杯(100mg)で1.5~2.0g)・紹興酒(100mgで5~6g)など。

アルコール度数は3~16度くらいまでが限度です。

ビールについては、ホップの種類によっては糖質にならない炭水化物もあるようですが、銘柄がよく分かりません。痛風のリスクがあるプリン体の量も銘柄によって違います。

ワインは大した糖質量ではないですね。

アルコールが及ぼす血糖値・糖尿病への影響

過剰なアルコール摂取が及ぼす身体への影響

アルコール(エタノール)は、基本的には健康に良くないものというのが一般常識です。

多量な飲酒は、肝障害や膵障害、肥満、心臓病、脳卒中、がん、認知症のリスクも高まるそうです。

糖尿病との関係でも、アルコール性膵炎(すいえん)と併発した「膵性糖尿病」は、血糖コントロールが難しく低血糖症を起こしやすいとされていますし、アルコール性肝硬変も「肝性糖尿病」を併発します。

さらに、アルコールの神経毒性の影響で、「糖尿病性末梢神経障害」を早期に発症するリスクがあります。

ですから、蒸留酒は糖質ゼロだからいくら飲んでもよいということにはなりません。

またアルコールは、1g当たり7kcalと比較的カロリーが高いので、飲みすぎると肥満になりやすいというのも事実です。

アルコール(エタノール)を摂取したときの作用

アルコールは、肝臓に蓄えているグリコーゲンをブドウ糖へ分解するのを促進しますので、アルコールそのものには血糖値を上昇させる作用もあります。

一方でアルコールは、グリコーゲン以外の脂質やアミノ酸からブドウ糖を生成する「糖新生」を抑制します。

バランスの問題ですが、肝臓でアルコールを分解するのにもエネルギーを消費しますし、アルコール摂取後に一時的に血糖値が下がるのも不思議ではないのです。

すでに糖尿病でインスリン治療や経口血糖降下剤を適用している場合は、低血糖症を起こしやすくしますので、飲酒は避けるべきです。

適度な飲酒での糖尿病予防効果

アルコールは基本的に健康に良くないと書いてきましたが、興味深い結果もあります。

南デンマーク大学国立公衆衛生研究所の、飲酒習慣と糖尿病発症との関連追跡調査によると、男性では週に168g、女性では週に108gのアルコールを飲んでいる人の方が、飲酒習慣が全くない人よりも、2型糖尿病リスクが男性43%、女性58%低下することが分かったとのことです。

しかもどのアルコール飲料も同じ効果があるわけではなく、この糖尿病発症リスクの低下はワインとビールに限られおり、ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒については、男性では低減効果は認められず、女性では逆にリスクが高まったというのです。

 

前半の公表数値を受けてか、適度な飲酒には糖尿病予防効果があるとする意見もありますが、ちょっと違うようです。

どのお酒でも同じならアルコールの摂取に起因すると言えますが、ワインとビールに限るとなると、アルコールではなさそうですよね。

アルコールではなくポリフェノール!?

ワインとビールに共通するものとは、実はポリフェノールです。

ポリフェノールとは植物が自らを活性酸素などから守るために作り出す成分で、強い抗酸化作用があります。

赤ワインのポリフェノール

ワインのポリフェノールは有名ですが、特に赤ワインに多く含まれる「レスベラトロール」という成分は、肌トラブルの予防効果や、長寿遺伝子と言われる「サーチュイン遺伝子」を活性化するほか、内臓脂肪の減少、そして血糖値の低下やインスリン抵抗性の改善についても多くの検証データがあります。

 

ビールのポリフェノールって、あまり聞いたことがないかもしれませんね。

「ビールの抗酸化力」という研究レポートによると、赤ワイングラス1杯とビール350mlとでは、同じくらいの抗酸化力があるという実験結果が出ています。

キリンの研究でも同等の評価をしていますね。

ビールの抗酸化作用に関する研究|キリン

ビールは主に麦芽とホップで作りますが、大麦由来とホップ由来のポリフェノールが複数存在しており、「キサントフモール」や「イソフムロン」といったホップ由来のものが研究成果になっています。

ビールのポリフェノール

ただし、ビールで糖尿病発症リスクの低下がみられたという調査結果を裏付けるポリフェノールは、まだ特定されていません。

また、日本酒や焼酎にもポリフェノールが含まれていますが、血糖値との関連性は示唆されていません。

まとめ

まずお酒の飲み過ぎは良くないということは確実です。

適度な飲酒は糖尿病予防効果があるという調査結果がありますが、それはアルコールによるものではなく、お酒に含まれるポリフェノールの効果ではないかということ。

ワインとビールで効果があったとのことですが、ビールについてはポリフェノールとの因果関係がはっきりしません。

確実なのは、「レスベラトロール」を多く含む赤ワインを適量飲むことです。

蒸留酒は糖質ゼロなので、たまには切り替えても良いのではないでしょうか。

醸造酒の紹興酒は、日本酒にカラメル色素を混ぜて甘くしたようなものなので、避けたほうがよいです。

 

ちなみに厚生労働省が提示している「節度ある適度な飲酒」は、1日平均純アルコールで約20g程度です。

ただし、女性や65歳以上の高齢者、アルコール代謝能力が低い人は、もっと少ないほうが良いとしています。

お酒に換算するときの目安は以下のとおり。

節度ある適度な飲酒

ワイン1日2杯なら、全然大丈夫ですよ。

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