糖尿病予防だけじゃないアディポネクチンに注目したい!

アディポネクチンで元気な老夫婦 血糖値を下げる成分

近年、「アディポネクチン」というホルモンが、「長寿ホルモン」とか「やせホルモン」とか言われて、話題になっています。

このアディポネクチンは、糖尿病の発症リスクも低くするということで、今回取り上げてみることにしました。

アディポネクチンってなんだ?

「アディポネクチン」は、脂肪細胞から分泌される※「善玉アディポサイトカイン」で、ホルモンの一種です。

(※脂肪細胞から分泌される生理活性物質をアディポサイトカイン(アディポカイン)と言います。

善玉と悪玉があって、アディポネクチンやレプチンは善玉アディポサイトカイン、TNF-αやPAI-1などは悪玉アディポサイトカインと言います。)

アディポネクチンの糖尿病予防効果

生活習慣と病気との関連性を大規模調査する、国立がん研究センター主体の「多目的コホート研究(JPHC Study)」というものがあります。

このJPHC Studyによると、5年間で糖尿病を発症した417人と、発症しなかった1197人を対象に調査したところ、血液中のアディポネクチン濃度が高いほど、糖尿病の発症リスクが低下するということが明らかになりました。

アディポネクチン濃度と2型糖尿病罹患との関連|国立がん研究センター

アディポネクチンはインスリン感受性を上げる作用があるとされていて、量が少ないと逆にインスリンの働きが悪くなり、「インスリン抵抗性」が増して2型糖尿病になるリスクが高まるようです。

 

また、フラミンガム研究という大規模調査でも、1998~2001年に実施された検査で2,356人を対象に分析したところ、アディポネクチン濃度が高いほどインスリン抵抗性傾向が減少したという結果が出ており、悪玉アディポカインであるTNF-αとレジスチンについては、逆に濃度が高いほどインスリン抵抗性傾向が増大したということです。

アディポカインとインスリン抵抗性の関係|ロバスト・ヘルス

糖尿病予防以外にどんな働きがあるのか

動脈硬化・高血圧・心筋梗塞・脳卒中の予防

アディポネクチンは、血管内の傷を修復することでも知られていています。

それだけでなく、血管を拡張する働きもありますので、動脈硬化や高血圧の予防にもなります。

動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中につながりますので、これらの生活習慣病リスクを低減します。

長寿ホルモンと言われる訳

実際に100歳を超える長寿の方のアディポネクチンを計測すると、平均値を大きく上回っていることが分かっています。

血中のアディポネクチン平均値は、1mlあたり5~10μg(マイクログラム)ですが、プロスキーヤーだった(故)三浦敬三さんは101歳当時で31.0μg、日本舞踊家の板橋光さんは103歳当時で48.5μgだったそうです。

やせホルモンと言われる訳

運動をすると、筋肉にある「AMPキナーゼ」という酵素が働いて、糖や脂肪がエネルギーになります。

アディポネクチンは、この「AMPキナーゼ」を活性化するので脂肪を燃焼させる働きがある、つまり脂肪をため込まなくなるというわけです。

AMPキナーゼの活性化は、糖尿病予防効果のところでご説明した「インスリン抵抗性」を改善する要因でもあります。

脂肪が多ければいいのか?

そんないい事ずくめのアディポネクチンですが、脂肪細胞から分泌されるので、脂肪が多いほうが分泌量も多いのではないかと思われるかもしれません。

しかし実際はその逆で、脂肪、とくに内臓脂肪が増えるとアディポネクチンは減ってしまうことが分かっています。

理由としては、脂肪が蓄積して脂肪細胞が肥大化すると、悪玉アディポサイトカインの方が優位になって放出されて、善玉アディポサイトカインであるアディポネクチンを減らすのではないかと言われています。

アディポサイトカインの様子

出典:高橋医院

腸内の善玉菌と悪玉菌のような関係ですね。

そういうわけで、肥満はやっぱり良くないのです。

糖尿病との関係で言えば、肥満で脂肪細胞が肥大化すると、アディポネクチンは減少し、悪玉アディポサイトカインは増えるので、インスリン抵抗性が増して糖尿病リスクが高まることが分かりました。

どうやって増やせばよいのか

まず肥満にならないことが基本ですので、糖質は控え、カロリーオーバーもしないことです。

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンですので、食品から直接摂取することはできません。

ただし、食品によってアディポネクチンを作り出す機能を高めることはできます。

また、運動によってもアディポネクチンは増えることが分かっています。

大豆食品を食べる

大豆食品

アディポネクチンの発見者である大阪大学の松澤佑次元教授自らが、大豆たんぱくにアディポネクチンを増やす作用があることを、マウス実験で明らかにしています。

フジテレビ系列の【その原因、Xにあり!】2017年5月5日放送「健康長生き25の秘けつSP」でも、長生きホルモン「アディポネクチン」を取り上げて、大豆たんぱくに注目していました。

「ホルモンは1ヶ月程度では増えない」とのことで、長年食べ続けることが大事だそうです。

番組では、「マグネシウム」もアディポネクチンを増やすとのことでした。

 

また、大豆たんぱくに含まれる「βコングリシニン」という成分は、血中の中性脂肪を減らすことが知られています。

人による試験でも実証されていますが、短期の試験データでは1日5gのβコングリシニンを摂取しており、豆腐2丁半~3丁分に相当します。

普段の食生活では、ちょっとハードな量ですので、短期では難しそうです。

それと、納豆などの発酵食品では発酵過程でβコングリシニンが使われてしまうので、残っていないそうです。

もし、βコングリシニンが中性脂肪を減らすことでアディポネクチンが増えるとすれば、納豆はNGですね。

豆腐・豆乳を長年続けると間違いなさそうです。

シークワーサーのノビレチン

「ノビレチン」は柑橘系の植物に含まれるフラボノイドの一種です。(フラボノイドも後述するファイトケミカル)

ノビレチン自身に、アルツハイマー型認知症の予防や、脂肪分解促進、アレルギー抑制などの効果があるとされていますが、アディポネクチンを増やすことも確認されています。

柑橘系の中でもシークワーサーに含まれる量がダントツに多く、沖縄が長寿の県なのはシークワーサーのおかげかもしれません。

アマニ油・えごま油のαリノレン酸、青魚のEPA

α-リノレン酸は、いわゆるオメガ3系の必須脂肪酸です。

植物油の中でも、えごま油と亜麻仁油(アマニ油)に特に多く含まれています。

このα-リノレン酸が、アディポネクチンを増やすと言われています。

また、α-リノレン酸を原料にして、 DHAやEPAが体内で作られることから、青魚に多く含まれるEPAもアディポネクチンを増やすと言われています。

アスタキサンチン

またカロテノイドの一種である「アスタキサンチン」もアディポネクチンの働きを助けると言われています。

アスタキサンチンは、サケやエビ、カニなどに多く含まれている天然の赤い色素で、強い抗酸化力を持っています。

 

オスモチンがアディポネクチンを助ける

「オスモチン」はファイトケミカルの一種です。

(ファイトケミカルとは植物に含まれる天然の化学物質で、色素や辛味成分であったり、紫外線や外敵から身を守るために抗酸化力があるものが多く、第7の栄養素とも言われる。ポリフェノール類が有名)

 

アディポネクチンはホルモンですので、ちゃんと働くためにはアディポネクチンと結合する「受容体」のほうも大切です。

受容体が積極的にアディポネクチンをキャッチすると、働きが増します。

このアディポネクチンの受容体を活性化することが明らかになったのが、「オスモチン」です。

また、オスモチンは分子構造がアディポネクチンと似ており、「やせホルモン」のところでご説明した、AMPキナーゼを活性化することも分かっています。

植物から抽出できるので、今後の活用も期待されています。

ピーマンやトマト

オスモチンを多く含む植物は、ピーマンやパプリカなどの唐辛子の仲間、トマト、とうもろこし、りんご、さくらんぼ、キウイフルーツなど。

とうもろこしは糖質が多いし、フルーツは果糖ですがあまり食べ過ぎるのはよくありません。

お薦めはピーマンと皮付きのトマト。

オスモチンは外皮の周辺に多いので、皮も食べましょう。

新薬の開発も

東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の研究グループでは、アディポネクチン受容体を活性化する「アディポロン(AdipoRon)」という物質を、2013年に発見しています。

アディポロンは、アディポネクチンの効果そのものにつながりますので、新薬となれば、2型糖尿病や肥満のほか、心筋梗塞や脳梗塞、がん、アルツハイマー病などの治療薬としても効果が期待されます。

 

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